懐中時計
半ページにも満たない短編。
懐中時計とネズミのはなし。
あらすじ
懐中時計が、チクタク動いていると、ネズミがやって来て、誰も見てないのに動いているのは馬鹿だという。
それに対し、懐中時計は誰も見てないのに動いているから、いつでも役立てる。人の見てない時、あるいは人の見ている時のみに動いているのはどちらも泥棒だと言う。
ネズミは恥ずかしくなって去ってしまう。
感想
誰も見てないのに動いているのは馬鹿なのだろうか、それとも泥棒なのだろうか。
これはいわゆる容量のいい人というのはどういうひとかという問題提起なのだろう。人が見ているときだけ、働いて。そうでない時はだらけている。上司にはごまを擦って、その他の人に対しては態度が違う。ぱっとみ嫌なやつだが、嫌なやつだからと言って泥棒であるとは限らない。嫌なやつは泥棒なのか。泥棒は嫌なやつだが、嫌な奴は泥棒とは言えない。十分条件と必要条件を思い出す。
懐中時計は働き者だ。人が見ていようがどうしようが、電池の続く限り動き続ける。しかし、これは働き者だからナノではなく、動いてないと時が分からなくなってしまうからだ。もし、時計が止まっていて、人が来たからと言って、急に動き出したとしても、時間調整をしなければ、時間は間違ったときから刻み始めてしまう。これは要領がいい云々以前にまず、労働者として失格だろう。
だから、懐中時計は自分の最低限の仕事をするために動いているとも言える。
もし、懐中時計が時間調節の機能も持っていたら、どうなるだろうか。人がいない時は止まっていて、人が来たら時間を調節して、正しい時を刻む事ができるようになる。これならば懐中時計はやろうという気にもなるだろう。
人間側から見たときにはそれは、サボっていて迷惑な奴に見えるのだろうか。いや、そもそも、人間の見えないところでサボっている前提なので、人間が迷惑と思うはずは無い。ならば懐中時計はいくらでもサボって問題がないのだ。
この懐中時計が愚直にもずっと働き続けなければならないの時間調節の機能を持っていない、つまり能力が不足しているからに他ならないのだ。
人が見ていないときに動くものが泥棒だというのはよく分かる。泥棒は人目を忍んで悪事をはたらくものだ。堂々としてるのは強盗である。
では人が見ているときにしか働かないのは泥棒なのか。これはよくわからない。賃金泥棒ということなのか。賃金を払っているのに、その上司が監督しているときしか働かず、他の時間はサボっているから賃金泥棒。そんな感じはする。
しかし、人に見せるのが仕事の懐中時計の場合はこれは当てはまらないのではないか。この懐中時計の仕事に人が見ていない時の行動は決められていない。あくまで、人に正しい時を見せるのが、この懐中時計の仕事なのであって、それさえ守っていれば、他の時間に賃金云々言われる筋合いは無いだろう。
しかし、そういった小賢しいことを考えさせないように、働かせるのが上司の役目ではある。
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