森の神
あらすじ
超短編。もしかしたら原稿用紙一枚分もないかもしれないど短編。星新一もびっくり。
森の神様は砂漠に泉を湧かせて、木を生やしオアシスを作ってあげる。これは旅人が困らないようにという森の神様の配慮であった。
しかし、ある日大勢の人がやって来て、オアシスに家を建て、柵を作った。そして、オアシスに立ち入るものたちから、金を取るようになる。
これに腹を立てた森の神は森を枯らして泉を涸らせてしまう。それに対して、旅人から金を取っていた人たちは森の神様を恨んだ。
感想
夢野久作が裏に何を込めてこの話を作ったかは知らないが、僕には法律の事が思い浮かんだ。
貧者のために良かれと思って作った法律が逆の働きをしてしまう。例えば最低賃金とか。最低賃金を決めれば労働者は給料が高くなって喜ぶだろうと思いきや、経営者は雇う人数を減らして、結局総量で言えば賃金が下がってしまう。みたいな。
この場合、森の神というのが国で、旅人から金を取る人が経営者、旅人が労働者と言ったところだろう。この後、森の神は起こって泉を涸らすが、これはこの場合何を意味するのだろうか。企業お取り潰し、国有化、いや、共産主義化かも知れない。泉が涸れたら結局旅人も困る。そういう点では企業の取り潰しが一番近いだろう。こう考えると、森の神結構過激だ。リーマンショックがおきてしまう。
でも、森の神というならもう少し違う解決方法があるのに何故それはしなかったのだろうか。別にオアシスなくすのではなく、新しく別の所にまた違うオアシスを作ればそれでいいじゃないか。
森の神様の能力にも限界があって、オアシス一つを管理するので精一杯ということなのか。それともただ意地悪なのだろうか。
神様にも限界がある。この考えはとても日本的で、個人的には好きな考え方だ。どこまでも際限なく神様が救ってくれる世界では面白みがない。いかに、神様と雖もできないことはある。まあ、この場合全知全能とは言えないが。
そして、日本の神は総じて意地悪と決っている。というよりも、民話を見ていると無邪気な感じがする。天照大御神が天の岩戸に篭ってしまうなんてのはまさしく、そんな子供っぽい意地悪さの現れな気がする。
どちらにしろ、無限に資源を出してくれる状況を想定しても、現実に全くそぐわなくなってしまうからアウトだったという気もする。
もし、森の神様が新しいオアシスを出してくれたらどうなっていたのだろう。
また、そのオアシスも柵で、囲われ金を取るようになる。
そして、新しいオアシスが作られ、そこも柵で囲われ、金を取るようになる。
しかし、次第にオアシスが増えてくると、価格競争が激しくなり、なかなか、旅人から大金をせしめる事ができなくなる。
すると、柵を建てたときのローンが払えなくなってくる。困った、その人達は談合を始める。
最初はみんなで、高い金額を設定してそれなりに儲けるのだが、裏切り者が現れる。一つのオアシスが安売りを始めるのだ。するとまた、価格競争に逆戻り。
遂には柵のローンが払えなくなって破綻するものが現れる。それを最初に談合を破って儲けた業者が買い取る。すると、自分の資本の大きさに任せて、更に安売りをし、周りのオアシス業者をどんどん弱体化させ、買い取っていく。
気がつけば全てのオアシスは合併し巨大オアシス会社になる。一社しかなければ、価格設定は思うがまま。旅人から高い利用料をふんだくる。
森の神はまだまだオアシスを作る。
しかし、できたオアシスは全てその巨大企業に柵を建てられ、自分たちのオアシスの価値が下がるからと言って、埋立てしまう。
これに怒った森の神は全てのオアシスを涸らしてしまう。
気がつけば結局同じ話になってしまった。
森の神にオアシスを作ると涸らすの選択肢しかない時点で、すでに八方塞がりだ。
寧ろ森の神は旅人に何をすることができたのだろうか。
人類の歴史は連綿とこのことを考えてきた歴史のようだと思う。言って締めくくる。
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